移民総研

諸外国における移民問題を分析・解説していきます。

2019年05月

2019.5.14

当面の活動方針

 

外国人を雇用する企業は、諸法令を遵守することはもとより、当該外国人に対して、積極的に、日本人と同等の待遇を付与すべきであり、社内制度上も、同等の待遇を保障する手続を整えるべく努力すべきである。なお、法令の運用にあたっては、同等の待遇を超えて外国人に対する処遇を強制すべきではなく、企業にとって過度なコストやリスクを負わせるべきではない。

l  4月18日、東京電力ホールディングスは、「特定技能」の外国人労働者を福島第一原発の廃炉作業などで受け入れる方針を明らかにしました。東電や協力企業の社員が1日平均で約4000人働いている職場では、現時点で約30人の外国人が放射線業務従事者として登録しているようです。

l  人道主義的な批判はさておくとして、入管法的には、かなりリスキーな選択です。いかに「放射線量の正確な理解、班長や同僚からの作業安全指示の理解が可能な日本語能力が必要と考えられる。法令の趣旨に則ってください」と指示したところで、原発に馴染みのない国にいるN4の外国人に被曝リスクを完全に理解させることは不可能。日本で働きたい一心で内定をもらった外国人は、来日して職場に就いた瞬間から、失踪する機会を窺うでしょう。

l  しかし、「特定技能」の場合、被曝リスクを言い訳にした外国人が1人でも行方不明になれば、「特定技能」で雇っている全員を雇えなくなるリスクがあります。東京電力はそのリスクに気付いているでしょうか。それとも、「協力会社のリスクだから、ウチには関係ない」という方針なのでしょうか。

【Timely Report】Vol.427(2019.6.14号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「入管法は移民を受容しない!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 
全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  2018年10月1日時点の日本の人口は、前年比▲26万人の1億2644万人で8年連続の減少となりました。減少数・減少率ともに1950年以来、過去最大です。そんな中で、70歳以上が総人口比で初めて2割を超えました。5人のうち1人が70歳以上であり、4人で1人の高齢者を支えています。遠くない将来、70歳以上が4人に1人になり、3人に1人に向かっていくのは必定であり、そうなったときに2~3人で1人の高齢者を支えられるのか、という誰も否定できない厳然たる難問がそこに控えています。

l  外国人の受入増大に反対する方々は、「1人当たりの生産性が向上すれば問題ない」と言い張るのでしょうが、本気で+33%(1/4➡1/3)とか+100%(1/4➡1/2)の生産性向上が可能だと思っているのでしょうか。おそらく、そこまでは馬鹿じゃないと思います。だとすれば、つまるところ、「高齢者を支えない」という解決策しかありません。要するに「姥捨て山」です。

l  「生産性向上で何とかなる」と言い張る攘夷派の論客は、高齢者を切り捨てる「姥捨て山」政策についても言及すべき。そうでないとアンフェアです。

【Timely Report】Vol.420(2019.6.5号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「日本の近未来は介護業界に聞け!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
外国人に関する経済学を知りたい方は ➡ 外国人経済研究所 へ

l  428日、スペインで総選挙があり、下院ではサンチェス首相率いる中道左派・社会労働党が第1党になりましたが、「不法移民は強制送還」「モロッコ国境に壁を作る」と公約する新興右翼政党VOX24議席を獲得。1975年の死去まで実権を握った独裁者フランコに関する苦い記憶があるので、有力な極右政党が出てこなかったスペインにおいて、極右政党が国政に進出したのは1978年の民主化以来初めてです。VOXは、EUに対して、国境検問の再開を廃止したシェンゲン協定の凍結を要求しています。

l  昨年イタリアで反移民政党が参加する政権が発足したことで、地中海を渡って欧州に入る移民や難民の多くはスペインに向かっています。昨年1年間で、ギリシャやイタリアより多い58569人の難民が流入しました。VOXは移民急増への不安や既成政党への不満を吸収し、支持層を急拡大。フランスの極右政党「国民連合」のルペン党首は早速歓迎を表明。5月後半の欧州議会選挙で伸長が見込まれる極右勢力がさらに勢いづく可能性があります。

l  欧州における「反移民」の流れは、しばらく収まりそうにありません。
人々, 難民, 子供, 女の子, 肖像画, 子, 若い, 愛, 友人同士
【Timely Report】Vol.438(2019.7.1号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
外国人に関する経済学を知りたい方は ➡ 外国人経済研究所 へ

l  難民や移民に寛容なことで知られるカナダが、自国以外の国で既に難民申請をした場合、カナダで再申請することを禁止する方針を固めました。米国で受け入れを拒否された難民申請者が国境を越えてカナダ国内に大量に流入していることが背景にあります。保留中の難民申請の数は20万件を超え、審理待ちに平均20カ月かかるのが現状。国境近くの自治体は、申請手続を待つ難民のために古いスタジアムや公民館を住宅施設として再利用していますが、この費用負担を巡って、政府との間に軋轢が発生。カナダのトルドー政権は、一貫して難民を歓迎する姿勢を示してきましたが、秋の総選挙を控えて、難民問題に対して強硬な姿勢に転じ始めたようです。

l  この改正により、カナダ国境の出入国審査官は、他国で既に難民申請を行った人々について、カナダでの再申請を却下できるようになります。米政府の情報収集活動を暴露したCIAの元職員を匿った難民や、家族からの虐待を訴えたサウジアラビア女性、兵役を拒否したシリア男性などを受け入れてきたカナダが反難民に転じるとは思いませんが、今後の動きは要チェックです。
人々, 難民, 子供, 女の子, 肖像画, 子, 若い, 愛, 友人同士
【Timely Report】Vol.433(2019.6.24号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
外国人に関する経済学を知りたい方は ➡ 外国人経済研究所 へ

↑このページのトップヘ